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臨床ワンポイントセミナー

 ノンメタル歯科治療や内科的歯科治療、咬合治療などはまだウェブ上で検索してもありきたりな情報しか見当たりません。臨床で不安無くこれらを取り入れていくために少しでもお役に立てればと思い、主として歯科医療従事者や医療関係の方向けの有益なトピックスや具体的な手法などをご案内させていただきます。

ジルコニアを用いたオールセラミックス修復における陶材の選択とその適正な厚みについて

 オールセラミックスの中でプロセラシステムのようにその強度を確保する目的でコーピング材を有するものが多く見られるようになってきました。特にインセラムやウォルセラムなどジルコニアをその素材として使用するものは強い咬合力のかかる大臼歯部のクラウンやブリッジなどにも適用可能となり、大変注目されています。もし今後これらのシステムを臨床に取り入れ患者さんに提供しようとするならば外せない二つのポイントがあります。

 一つ目はコーピングの上に盛り上げる陶材の選択です。メーカーサイドの情報としては認可されているものの中から推奨陶材を知ることができます。通常のラボでは今まで使い慣れていた(あるいは在庫の確保のある)陶材がその中にあればそれを盛ってきます。しかしながら、ジルコニアと陶材の間には化学的な接着が望めず、いわゆる陥合力に頼らざるを得ない問題があり、不用意にシステムに合わない陶材を選んでしまうとコーピングからいとも簡単に剥離してしまうことになります。

 JNDAでは数社の陶材メーカーの研究室(開発室)から最新の情報を得るように連絡を密にしておりますが、中には『自社製品に関して実は推奨されるだけの自信が無いし、このことは最重要課題として新しい素材を開発中です』とのコメントをいただいたところもあります。いくらジルコニアによってブリッジにも対応可能というコーピング強度が確保できたとしても、各システムにあった適正な陶材を使うよう指示しなければ口腔内で長く安定することは難しいと言えます。

 二つ目に陶材の厚みに関しても従来のオールセラミックスのように破折しないようクリアランスを十分確保しようとしてしまうと、コーピングの支えが得られないほど厚く盛りすぎてしまい、コーピング強度との差からかえって上部陶材のみがチッピングを起こすことになります。咬合器上で対合関係を十分診査し各システムに合った適正なクリアランス量をできるだけ均一に設定する必要があります。また支台歯形成に際してもこの対合関係によってどのように咬合力がかかるか(特に力のベクトル)をよく診査し、その上で軸面の角度やマージンの形態を設定する必要があります。

 ジルコニアが認可されたことで適応症例が広がり今後ますますノンメタル歯科治療が注目されていくことは間違いありません。しかしながら新しい素材が長い臨床実績を持つまでには相当の期間が必要になります。メーカーやラボ任せにするのではなく、協調しながらもあくまで私達の自己責任においてできるだけ安全に臨床応用していかねばなりません。

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接着性レジンセメント使用上の留意点について

 オールセラミックスなどノンメタル歯科治療はさまざまな困難なステップがありとても細かく神経を使うものです。中でも接着においては適切な防湿に始まって、あふれ出すセメントと同じ白い色の修復物を位置異常なく適所に装着したことを確認しなければならず、さらに完全にセメントが硬化してしまう前にその位置を再びずらしてしまわないように注意しながらも取り残しがないように余剰セメントを完全除去する必要があります。

 通常使用されるレジンセメントは優れた接着効果と唾液による不溶性から適切に処置されればとても信頼性が高い良い結果を導くことが可能ですが、その反面一歩誤ると取り返しのつかないことになってしまいます。セメントシステムによってはデュアルキュア型のボンディング剤を塗布したあと時間が経過してしまったり、マニュアルに従って光照射などしてしまうと精密に作られた修復物は容易に浮き上がってしまいます。

 また確実な余剰セメントの除去には熟練を要します。セット前にあらかじめ細い圧排糸などをマージン部に挿入しておき付着の方向にセメントが流れ込まないようにしておきます。セット後はまず浮き上がらせないように、位置がずれないように細心の注意を払いながらコンタクトポイント近くまで上がってきたセメントをフロスを通すなどして押し下げます。

 仮照射して大まかなものを外してしまうという手法が取れるものもありますが、種類によってはかえって残りの部分が取りきれなくなることもあります。そのよう場合は細く硬いビニールの筆にレジンモノマーを少し湿らせたものでふき取るようにしてとり、幾度かモノマーで筆を洗いながら繰り返し外していくと比較的容易に除去できます。隣接面はスーパーフロスなどを使って仕上げ、マージンの細かなところは3Aの探針などでチェックしていきます。

 レジンセメントは不溶性のため取り残してしまうと術後のプラークコントロールに大きな支障をきたします。 ここを失敗してしまうとそれまでの数時間にわたる治療の全てが水の泡になってしまいかねません。 術者、アシスタントの連携を普段から十分トレーニングしておき、セメント硬化までの短く限られた作業時間の中であっても、確実で失敗の無い処置ができるようにできるだけの準備をしておく必要があります。

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プラークコントロールの観点から見たメタルボンド修復の限界について

 オールセラミックスとメタルボンドはそれぞれ利点と欠点がありそれらを熟知した上で適応を考えなければなりません。オールセラミックスの審美性、メタルボンドの強靭性がよく取り上げられますが、術後長い期間安定していい予後を確保するためにはプラークコントロールの容易さも考慮しなけらばなりません。その観点から見たときにメタルボンド修復には二つの限界があります。

 ひとつは表面性状の問題です。プラークコントロールでもっとも大切なマージン部分は陶材と金属がもっとも近接した部位となります。この部分は咬合面など他の厚みがある部分に比べてどうしても表面がポーラスとなりプラークが付着しやすくなってしまいます。

 もうひとつは構造的な問題です。メタルボンドのマージン部分はとてもたくさんの材料のジョイントがわずか1ミリ以内の間に生じてしまいます。上から陶材と金属、金属とセメント、セメントと歯質です。どんなに精度を高くしたとしてもこの構造は存在するため経時的な変化とともに非常にプラークコントロールには不利な修復物といえます。

 オールセラミックスとメタルボンドのどちらかを選択しようとするときにはこれらのことも重要な要素として考えに入れる必要があるといえます。

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各種コーピングに対する接着力の強化について

 アルミナやジルコニアなど各種コーピング材はレジンセメントに対する化学的な接着性をまったく有しません。一部には推奨セメントとしてリン酸セメントやグラスアイオノマーセメントを謳っているメーカーもありますが、そのセメント除去の容易さの反面、術後の溶解性や強度不足が危惧されます。

 そこでこれらコーピングに対するレジンセメントの接着力強化のためにいろいろな試みがなされています。ラボサイドで細かなアンダーカットを付与し陥合力を与えるなどもその一例ですが強度に与える影響が危惧されるため好ましい手法とはいえません。

 JNDAで推奨していますのはサンドブラスターで3M社製のコジェットサンドというものをコーピングに吹きつけ、その後シランカップリング処理をする方法です。もともと金属や陶材とコンポジットレジンなどの接着に使用していたものですがコーピングにも応用できることがわかってきました。浮き上がりや強度に与える心配もなく、チェアーサイドで迅速に処理できるため軸面が低いなど脱落が危惧されるような修復物セットの場合にはおすすめできる手法です。

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神経保存療法の限界について

 3Mixやヒールオゾンなどを用いてできるだけ神経を保存して歯の寿命を長く持たせるといった手法が今後もっと注目されてくると思います。しかしながら一部マスコミの報道のように『大きな虫歯も麻酔無しでほとんど削らずに治療できる』とか『ずきずき痛んでいた歯もうそのようにすっきり治った』とかが全てのケースで行うことができるわけもなく、これらを期待して来院してきた患者さんの要望に対し迎合するような形でなされた治療によってかえって症状が悪化することも考えられます。

 特に痛みなど症状の無い虫歯の治療の際に、これまでのようにきっちり虫歯を削り取れば難無く治癒していたものが、3Mixなどを過信するがあまり虫歯を取りきらず残したままふたをしてしまって、結局感染が進み数年後に神経を抜かなくてはならなくなってしまう場合だって十分に起こりえます。

 これら神経保存療法はあくまでも従来までの手法のみでは治癒が望めない、困難なケースにおいて補助的に取り入れるべきであり、その限界について常に術者は認識をしておく必要があるといえます。素晴らしい考えや新しくいい治療方法などもその普及の仕方を誤ってしまうと真に患者さんのための医療として成り立たせることが困難になってしまいます。

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ヒールオゾンの作用機序と正常組織に対する安全性について

 各種産業や医科ではオゾンガスを発生する機器がいろいろな分野で使用されています。
オゾンガスは酸素を電気放電することによって作られるますが、作用した相手を瞬時に且つ強力に酸化することができ、直後には酸素・水・二酸化炭素に変化するため害のあるものは何も残らないといった安全で理想的な殺菌作用を有します。

 詳しく説明しますと、生体のPh付近ではイオン反応が主となり、細菌やウイルスの細胞壁・細胞膜の不飽和脂肪酸の二重結合に1,3-双極子付加して二重結合の開裂を伴って過酸化物を与えます。この反応は細胞膜を構成しているリン脂質の不飽和脂肪酸残基で起きることがわかっています。つまり炭素二重構造を破壊することで殺菌・消毒効果をあげる仕組みになっています。

 そのためにはある程度以上のオゾン濃度が必要ですが、ヒールオゾンでは4494mg / m3=2100ppmと十分なレベルです。医科で慢性的な感染症患者の血管内にオゾンを作用させたいときはもっと濃度を上げることもありますが、歯科において歯質や根尖付近に浸透させるには上記の濃度で十分なのです

 ヒールオゾンは、わずか20秒〜60秒で軟化象牙質なら2mm程度浸透され、ミュータンス菌などの殺菌が可能となります。シリコンキャップで密閉し、真空状態を確認してから照射されるため、酸化還元の反応平衡も安定して酸化方向に保ち深部へ酸化を進めさせながらも圧力は平衡であるのでガスとして過剰に押し出す心配はありません。またミネラルを豊富に含む正常な組織ではこの酸化反応が進まないため、感染歯質内の細菌を強力に酸化した後ではその他の歯質には浸透されず影響はありません。

 ヒールオゾンはヨーロッパやカナダ、オーストラリアなどを中心に広く普及し、今まで世界中で数百万人の方、一千万本以上の虫歯がこの最新機器によって治療されていますが副作用報告はゼロでその高い安全性が実証されています。

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咬合治療の基準点としてのCR(中心位)について

 咬合治療においてどうしても複数歯の修復が必要となり、またOVD(咬合高径)を変更せざるを得ない場合があります。そのような時よく学術論文などでも、中心咬合位でバイトを2ミリ挙上した、などという記述がみられますが、治療の正当性をあとから評価するためにはこれらの基準点をあいまいにしてしまっては意味をなしません。

 中心咬合位は厳密に言うと日々変化しているものといえます。CR(中心位)に合わせた治療咬合の設定をされた症例では必ず下顎が近心、上方へ移動しようとするためしばらくすると必ず位置がずれてしまいます。

 よって逆の発想により基準点としてCR(中心位)を用いることが意味を成してきます。CR(中心位)にてバイトを2ミリ挙上したという表現は中心咬合位がその後変化したあとであっても用いることができるからです。

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各咀嚼筋の平衡(バランス)が顎機能に大きな影響を及ぼす理由について

 顎関節は顎運動をつかさどる重要な器官であるため、咬合、咀嚼などの問題と深くかかわっています。また、機能的あるいは器質的な変化から障害を起こし、臨床上さまざまな問題を引き起こします。したがって、その病態を理解するには、顎関節の解剖学的な形態や機能を把握することがますます重要となってきます。

 そういった意味でもっとも大切な役割を果たす関節円板には一般によく知られている外側翼突筋の上頭以外にも実は側頭筋の前腹とさらに咬筋の深部も付着しているのです。

 よく言われる左右の咀嚼筋のバランスだけではなく、これら各々の筋同士のバランスが崩れるだけでも円板の位置異常が引き起こされ、しいては顎機能に大きな影響を及ぼすことにもつながるのです。

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